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セラチア菌とは大腸菌とよくにた細菌で、形状は棒状あるいは円筒状のグラム陰性桿菌であり、Serratia marcescensを始めとして数種類の菌種を有しています。
セラチア菌は水や土壌に広く分布していて日本では至る所で存在が確認されています。一般の家庭でも水回りなどの湿りがちな環境では普通に存在していて、赤色やピンク色の色素をもつバイオフィルムを産生することからも、排水溝の周辺では肉眼でも確認することが可能です。
こうしたことから普段水道から水をとって調理したり水を飲んだりすることで人間の口腔内にも存在し、通常は危険度の高い菌ではありません。
ただし高齢者や乳幼児、または病中病後の抵抗力が下がっている人がセラチア菌感染症にかかると肺炎や敗血症、腸炎などを引き起こし、最終的に多臓器不全となり命を落とす危険性があります。
したがって易感染者(免疫力の弱い高齢者や乳幼児、病気療養中の人など)のいる家庭では水回りの清掃と消毒などに注意が必要となります。上記の通りセラチア菌は湿気の貯まりやすい所に広く分布している細菌ですので感染経路も広く注意が必要です。
健康な人であれば危険度は低いセラチア菌感染症ですが、病気療養中の人や高齢者、乳幼児のように抵抗力の低い人は感染すると肺炎や腸炎、敗血症を引き起こし、最悪の場合多臓器不全で命を落とす危険性のある病気です。
感染症の場合、感染してから発病するまでの間を潜伏期間といい、菌の種類によって大体潜伏期間が判明しています。
ところがセラチア菌のようにありふれていて日常生活を送っていると、感染しやすい低毒性の細菌(常在菌)の感染症が発症した場合には、潜伏期間の特定は非常に困難なのが現状です。
その理由は、潜伏期間の特定に重要な「いつ感染したのか」という要素が非常に曖昧だからです。特にセラチア菌のように市中の水回りや土がある所には必ずと言ってよい程存在する菌の場合、日常生活を送っていれば感染しているというケースが多いので、具体的な潜伏期間の特定は難しくなってしまいます。
また院内感染の場合は、セラチア菌感染症に限らず入院後48時間以上経過してから発症した場合という定義があります。
セラチア菌の感染経路は多岐にわたります。代表的なのが、手指を介した接触感染、咳やくしゃみによる飛沫感染、食器や道具を経由した物品感染などとなります。
また院内感染の場合、医療従事者が保有しているセラチア菌が治療に使うカテーテルや注射針などに取り憑き、そこを通じて感染するケースもあると見られています。
物品感染の場合、煮沸消毒を行うことで殆どのケースで予防可能ですが、手指による接触感染を予防するには手指の消毒が重要となります。また、咳やくしゃみによる飛沫感染防止にはマスクなどで予防するのが効果的とされています。
特に高齢者や病気療養中の人など易感染者のいる家庭では、食器や調理器具は定期的に塩素系の消毒薬で消毒すると良いでしょう。
またセラチア菌は土や水回りの湿気の貯まりやすい所を好んで生息しています。排水溝を放置しているとセラチア類の菌が赤やピンク色のバイオフィルムを産生して増殖していくのが肉眼でも確認出来ます。
したがって水回りの清掃をこまめに行うというのも感染予防には重要となります。同様に寝具についてもこまめに洗濯乾燥させて、できるだけセラチア菌の増殖を食い止めることが重要となってきます。
セラチア菌による院内感染が日本で注目を集めるようになったきっかけは、平成14年に起こった東京の脳神経外科病院でのセラチア菌感染症のアウトブレイク(集団発生)が報道されたことでした。その後の調査でこの病院でセラチア菌感染症が発生した症状とその原因、並びに感染経路が特定されましたが、その概要は次の通りです。
症状1:カテーテル関連の菌血症
症状2: 人工呼吸器関連の肺炎
症状3: カテーテル関連の尿路感染
症状4: 外科術後創部感染
症状5:人工呼吸器関連以外の院内肺炎
症状6:径鼻チューブによる副鼻腔炎
症状7: 褥創からの皮膚感染および骨髄炎
症状8:クロストリジウム・ディフィシルによる院内下痢など
これらの症状のうち、殆どのケースが医療従事者や見舞客などが保有しているセラチア菌によって、治療用医療器具や手術道具、リネン関連が汚染され、抵抗力が低下している入院患者が感染し発症したと考えられています。
セラチア菌のように低毒性ながら抵抗性の低い患者が日和見感染を起こすことで重篤な状態に陥る可能性のある菌の院内感染を防ぐ手だては欧米を中心に研究が進められていて、そのガイドラインが日本の医療機関でも導入されています。
セラチア菌感染症は高齢者や病気療養中の人のように、抵抗力の低い易感染者がいる場合、消毒などによってセラチア菌の繁殖を予防することが重要になってきます。
セラチア菌は、家庭内ではトイレや浴室、台所などの高湿な場所を好んで繁殖します。排水溝周りや浴室のタイルの目地に、赤やピンク色の菌のコロニーが形成されたのを見たことがある人も多いと思いますが、この赤やピンク色をしたものがセラチア菌類のバイオフィルムなのです。
特に珍しいものでもありませんのでセラチア菌が非常に身近に存在している菌だということがこのことからも分かると思います。
易感染者とはいえ、自宅での療養可能な状態の患者の場合は「消毒と清掃」を心がけることで、かなりの確率でセラチア菌感染症を予防することが可能です。
水回りの清掃はこまめに行い、食器や調理器具は丁寧に洗った後、日常的には熱湯を掛けて消毒し、定期的に塩素系の消毒薬で消毒するようにしましょう。また洗濯機は洗濯槽の内側に雑菌が繁殖しやすいので、こちらも専用の塩素系消毒薬を使って洗濯槽の内側に菌が繁殖しないように心がけるとよいでしょう。
また、家族が帰宅したら手洗とうがいを徹底し、セラチア菌感染症の最も大きな感染経路と見られる接触感染と飛沫感染を防ぐことが重要です。手洗には医療用の消毒石鹸を用い、殺菌力の高いうがい薬を使うと効果的です。
水回りだけでなく、寝たきりで寝汗を吸収している寝具や寝間着もセラチア菌が好んで住み着く場所ですから、定期的に洗濯して良く乾燥させるようにしてください。
セラチア菌感染症が発症しやすい環境にあるのが実は病院内です。というのもセラチア菌は人間にとって非常に身近な菌で、著しく抵抗力が低下した重篤な状態にある患者以外は、セラチア菌に感染しても発症しないケースが多いからだと考えられます。
したがってセラチア菌感染症が発症した場合には、それ以外の院内感染症にも注意を払う必要性があります。
院内感染の中でも原因菌が特定されるまでの間は特に緑膿菌に注意が必要で、緑膿菌をカバーする抗菌薬としては、第4世代のセフェム系抗生剤、ペニシリン系のカルバペネム系、モノバクタム系、ニューキノロン系などの抗菌薬が一般的には用いられます。
一方でセラチア菌が特定された場合に用いられるのがカルバペネム系、アミノグリコシド系、ニューキノロン系の抗菌薬または第四世代のセフェム系抗生剤です。
この中で第四世代のセフェム系抗生剤やニューキノロン系、カルバペネム系の抗菌薬は緑膿菌もカバーするため、院内感染発生時の初期投与の段階から用いられることが多くなります。
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